船で真鯛が上がったあと、そのままクーラーボックスへ放り込んでいないでしょうか。真鯛は体高があって血の量も多く、身もやわらかい魚です。そのため、船の上で締め方と血抜きをどうしたかが、家に持ち帰ってからの味の差として出やすい対象魚だといえます。
とはいえ、船上でやることはそれほど多くありません。順番と、どこまでやるかの線引きさえ決めておけば、揺れる船の上でも1〜2分で終わる作業です。この記事では、真鯛の締め方と血抜きを船で行う手順を、道具の準備から持ち帰りの冷やし方まで順を追って整理します。
ベルモント フィッシュピック 一撃Pro MP-166
脳締めが一発で決まるかどうかで魚の状態が変わるので、先端が細く硬い専用の締め具が扱いやすいです。
真鯛の締め方と血抜きを船で行う理由
釣り上げた魚をそのまま生かしておくと、魚は暴れ続けます。船のデッキやクーラーボックスの中で跳ねると、体をぶつけて内出血を起こし、身に血がにじんだ状態になります。いわゆる打ち身で、食べる段階では血合いのような赤い筋として残ってしまいます。真鯛は白身が身上の魚なので、この差が見た目にも味にも表れやすいと考えてよいでしょう。
もうひとつが血液そのものの問題です。魚の血は時間が経つと分解が進み、生臭さのもとになります。エラや内臓に血が残ったまま冷やしても、その臭みは抜けません。血を抜くというのは、におい成分になる前に体から出してしまう作業だと考えると分かりやすいはずです。
そして、これらを行えるタイミングは釣り上げた直後の船の上しかありません。港に戻ってから処理しようとしても、その間に魚は暴れ、血は身に回り、死後硬直が始まってしまいます。船釣りで締めと血抜きが重視されるのは、手間が特別だからではなく、やれる時間が限られているからです。
血が身に残ると、生臭さの原因になりやすいんだよ。締めるのは、釣った魚をおいしく食べるための下ごしらえなんだ🎣
船上での締めと血抜きに必要な道具
特別な道具をそろえる必要はありませんが、船上は揺れるうえに手が濡れています。「持っていれば使うが、なければ代用しづらい」ものだけは、事前にバッグへ入れておきたいところです。
- フィッシュピック(締め具)……脳締めに使う錐状の道具。先端が細く、真鯛の硬い頭骨にも入りやすい
- 小型のナイフ、または万能ハサミ……エラや尾の付け根を切って血を抜くために使う
- フィッシュグリップかタオル、軍手……真鯛はヒレとエラ蓋が鋭い。素手で押さえると切りやすい
- 神経締めワイヤー……必要に応じて。詳しくは後述します
- クーラーボックスと氷……血抜きのあとに冷やすため。船に海水があるので、氷は多めが安心
バケツは遊漁船に備え付けられていることがほとんどですが、共用なので使ったら海水で流しておきます。ナイフ類は必ず鞘やケースに入れて持ち込み、使うときも刃を人のいない方向へ向けます。船は不意に揺れるものなので、立ったまま力を入れる作業は避け、片膝をつくか、船べりに体を預けて安定させてから行うのが基本です。もちろん、作業中も救命胴衣は外しません。
真鯛を締める手順|脳締めから血抜きまで
手順は3つに分かれます。順番を入れ替えると効果が落ちるので、「動きを止める→血を出す→必要なら神経を処理する」の流れで覚えておくとよいでしょう。

①脳締めで動きを止める
最初に行うのが脳締めです。真鯛を横向きに押さえ、目の斜め後ろにあるくぼみにピックの先を当てて、まっすぐ差し込みます。位置の目安は、目の後方に親指1本ぶん離れたところ。横から見て目の上端の後ろと側線のあいだ、上から見ればみけんの間にあたります。うまく入ると魚全体がビクッと硬直し、口が大きく開いて動きが止まります。これが入った合図です。

一度で当たらないこともありますが、やみくもに何度も刺すと頭が傷だらけになります。位置を確認してから、角度を少し変えて入れ直すほうが確実です。真鯛は頭骨がしっかりしているので、先端が鈍った道具では入りにくい点も覚えておきたいところです。
②エラの付け根を切って血を抜く
動きが止まったら血抜きに移ります。エラ蓋を持ち上げ、エラの内側の付け根、赤い部分がつながっている膜をナイフかハサミで切ります。ここには太い血管が通っているため、切ると血が流れ出します。加えて尾の付け根にも切れ込みを入れると、より抜けやすくなるという考え方もあります。
切ったら、海水を張ったバケツに頭を下にして入れ、数分置きます。心臓がまだ動いている状態なので、血がポンプのように押し出されます。バケツの水が赤く濁ってきたら、抜けている証拠です。真鯛のような中型以上の魚では、5分ほどを目安にする人が多いようです。海水につけずに放置すると血が体内で固まり、抜けきらないまま残ってしまいます。
③必要に応じて神経締めを行う
脳締めで開けた穴から、背骨に沿った神経の通り道へワイヤーを差し込むのが神経締めです。ワイヤーを出し入れすると魚がピクピクと痙攣し、やがて反応がなくなります。死後の変化を遅らせる目的で行われる処理ですが、全員が必ずやるものではありません。判断の基準は次の章で整理します。
ピックを入れるのは目の斜め後ろのくぼみ。魚がビクッと硬直して口が開いたら、うまく入ったサインだよ。
神経締めはどこまで必要か|優先順位で考える
船の上は時間との勝負です。時合いに当たっていれば次の一投を投げたいですし、次々に釣れる日は処理が追いつかなくなります。そこで、迷ったときのために優先順位を決めておくと動きやすくなります。
- 脳締め……暴れによる身の傷みを止める。ここを飛ばす意味はほとんどない
- 血抜き……臭みの原因を取り除く。脳締めとセットで考えたい
- 冷却……ここまでやったら、あとは冷やす。冷やさなければ前の工程が生きない
- 神経締め……余裕があれば
神経締めが効きやすいのは、釣ったその日ではなく、2〜3日寝かせてから食べたい場合です。死後硬直が始まる時間を遅らせられるため、熟成させる釣り人ほど重視する傾向があります。逆に、帰宅してその日のうちに刺身にするなら、脳締めと血抜き、しっかりした冷却で十分な満足度になることが多いでしょう。
数を釣る日は、全部の魚に同じ手間をかけようとすると釣りの時間がなくなります。最初の数匹はていねいに、忙しくなったら脳締めと血抜きだけにする、といった割り切りも現実的な選択です。瀬戸内の船釣りで初心者が狙いやすい魚を押さえておくと、その日の釣果の見通しが立ち、処理のペース配分もしやすくなります。
締めたあとの冷やし方と持ち帰り
血抜きまで終えた魚は、最後に冷やして初めて仕上がります。ここが雑になると、それまでの工程の効果が薄れてしまいます。
潮氷を作ってから入れる
クーラーボックスに氷だけを入れ、その上に魚を置く方法では、接している面しか冷えません。船の上では、クーラーに海水を入れて氷と混ぜた「潮氷」を作り、そこへ魚を入れる方法が広く使われています。水は空気よりも熱を伝えるため、魚全体を短時間で冷やせるのが理由です。
ただし、真水の氷が溶けた水に長時間浸けたままにすると、身が水を吸って味がぼやけることがあります。しっかり冷えたらビニール袋に入れて水から出す、というひと手間を加えると安心です。氷の量そのものを持たせる工夫は、クーラーボックスの氷を長持ちさせるコツにまとめています。
やりがちな失敗
- 氷に直接あてる……接した部分が凍って白くなり、食感が落ちることがあります。袋や新聞紙をはさみます
- 魚が曲がったまま入れる……クーラーの内寸が足りず無理に曲げると、その形で硬直してさばきにくくなります。船釣りでは内寸から選ぶクーラーボックスのサイズが効いてきます
- 帰宅後に放置する……内臓は傷みが早い部位です。当日中に取り出しておくと、翌日以降の状態が変わります
遊漁船では、締めと血抜きをどこで行うか、船長がルールを決めていることもあります。デッキを血で汚したらすぐ海水で流す、他の釣り人の荷物の近くで作業しないといった配慮も、船釣りでは道具と同じくらい大事な準備だといえます。初めて乗る船なら、出船前に一言確認しておくとよいでしょう。
氷に直接あてると身が白くなることがあるよ。袋や新聞紙をはさんでから冷やすといいかも。
まとめ
真鯛の締め方と血抜きは、船の上で完結する短い作業です。要点をもう一度整理します。
- 暴れによる打ち身と、血が残ることによる臭みを避けるために行う
- 順番は、脳締め→血抜き→(必要なら)神経締め
- 脳締めは目の斜め後ろのくぼみ。口が開けば入った合図
- 血抜きはエラの付け根を切り、海水につけて数分待つ
- 神経締めは寝かせて食べたいときに効きやすい。忙しい日は無理をしない
- 最後は潮氷で冷やし、直接氷にあてない・曲げて入れない
道具は最小限で足ります。ピックとナイフ、そして冷やすための氷。この3つがバッグに入っていれば、次の一匹から実践できます。釣った真鯛をおいしく持ち帰るところまでを釣りの一部と考えると、船の上での1〜2分がぐっと意味を持ってきます。
ベルモント フィッシュピック 一撃Pro MP-166
締め具は忘れると代用が効かない道具なので、次の釣行前にバッグへ入れておくと迷いません。



