海水温を調べたら12℃と出た——そんなとき、この数字で釣りになるのか、それともやめておくべきなのかで迷います。広島や瀬戸内で陸から竿を出していると、冬から春にかけて出てくる迷いです。
「水温が低いと釣れない」とだけ書かれた情報を見て出かけるかどうかを決めかねている人に向けて、気象庁の実測データから瀬戸内の水温のふるまいを整理しました。先に言ってしまうと、12℃は特別に低い数字ではありません。
30秒でわかる結論|水温何度で魚が釣れるか
- 1つの数字では答えられません。見るべきなのは「今が1年の幅のどこにいるか」です
- 安芸灘・伊予灘の水温は、冬の底で月平均12.1℃、夏の天井で26.7℃
- よく検索される「水温10〜16℃」は、1月から4月の月平均そのもの。この4か月はほぼ毎日この帯に入る
- 10年分の実測で8℃を下回った日は0日。マダイの生息水温下限とされる8℃は割っていない(ただし後述のとおり深さの違う数字)
- 水温の底は3月で、気温の底(1月)より2か月おそい
- 前日との差は中央値0.12℃。1日で急に変わる前提で考えなくてよい(海域平均の値。足もとの水温は別)
安芸灘・伊予灘の水温は冬12.1℃・夏26.7℃
気象庁は瀬戸内海を「大阪湾」「播磨灘・備讃瀬戸」「備後灘・燧灘」「安芸灘・伊予灘」「周防灘」の5つに分けて海域平均の水温を公開しています。ここではそのうち安芸灘・伊予灘の値を見ていきます。この5海域には平年値データが存在しないため、公開されている実測から2016年から2026年までの有効3,932日を月ごとに平均しました。

図の数字は月別の平均水温で、色が濃い1月から4月は平均が10〜16℃に入る月です。月平均でいちばん低いのが3月の12.1℃(2月とほぼ同値で、小数第2位まで見ると3月がわずかに低い)、いちばん高いのが8月の26.7℃。日ごとの実測まで見ると、この10年の最低は10.18℃、最高は28.86℃でした。
この幅は海域ごとに違います。備後灘・燧灘は2月の平均が10.87℃、周防灘は10.45℃で、安芸灘・伊予灘より低くなります。実測の最低も備後灘・燧灘が9.0℃、周防灘が8.4℃と下に振れます。瀬戸内とひとくくりにせず、自分の釣り場がどの海域かで見てください。
水温が「低い」「高い」は、その海のふだんの幅とくらべて決まるんだよ。数字だけ見てもピンとこないよね。
「水温10〜16℃」は1月から4月のふつうの水温
水温を調べる人は、「海水温 15度 釣り」「水温 12度 釣り」のように具体的な数字で検索しています。実測ではこの10〜16℃台の語の合計が330で、30度台の50を上回りました。低いほうの水温を気にしている人が多いということです。
そこで、この帯が安芸灘・伊予灘ではいつにあたるのかを数えました。水温が10〜16℃だった日は3,932日のうち1,477日で、全体の37.6%。月ごとの割合は1月97%・2月100%・3月100%・4月100%・5月30%・12月19%で、6月から11月はゼロです。つまり10〜16℃は、1月から4月のあいだ「ほぼ毎日」その状態ということになります。冒頭の12℃も、2月と3月の月平均そのものです。
さらに、この10年で8℃を下回った日は1日もありません。瀬戸内海東部のマダイを調べた研究発表要旨には「マダイの生息水温下限である8℃」という記載があり、大阪湾・播磨灘・備讃瀬戸の最低水温は1972年から1986年までは数年に1度8℃を下回っていましたが、それ以降は1996年を除いて8℃以上で推移しています。この間に、2〜3月の漁獲量が1980年代前半までほとんどなかった状態から、80年代後半以降は漁獲が認められる状態へ変わったことも報告されています。
ただしこの8℃は水深10mで測った値で、ここまで見てきた数字は海面水温です。深さが違うので厳密な比較ではありません。それでも、少なくともマダイの生息水温下限を大きく割り込むような冷え方はしていない、とは言えます。
水温の底は3月|気温より2か月おそい
もうひとつ、数字を見るときに効くのが気温とのずれです。広島の月平均気温の平年値と並べると、気温の最低は1月の5.4℃ですが、海面水温の最低は3月。海の底は、空気の底より2か月おくれてやってきます。
次の表は水温から気温を引いた差です(水温は2016年から2026年の実測平均、気温は1991年から2020年の平年値で、算出期間が異なります)。
| 月 | 水温−気温 | 月 | 水温−気温 |
|---|---|---|---|
| 1月 | +8.5℃ | 7月 | −2.8℃ |
| 2月 | +5.9℃ | 8月 | −1.8℃ |
| 3月 | +2.6℃ | 9月 | +1.0℃ |
| 4月 | −1.0℃ | 10月 | +4.8℃ |
| 5月 | −2.8℃ | 11月 | +7.7℃ |
| 6月 | −2.9℃ | 12月 | +9.6℃ |
水温が気温を下回るのは4月から8月までの5か月だけで、残りは水温のほうが高くなります。12月は差が+9.6℃に開き、陸で真冬の寒さを感じていても海の表面は17.1℃。逆に4月や5月は陸が暖かくなっても、海はまだ13〜16℃台です。
気温と水温は別ものだよ。陸が暖かくなっても、海はまだ追いついてないことがあるんだ。
海域ごとの直近の水温は釣り指数ページで確認できます。ただし掲載しているのは直近の観測値で、その日の朝の水温そのものではありません。その日その場の数字が要るなら、自分で測るのが早いです。
水温は1日ではほとんど動かない|測るのは自分が立つ場所
「水温が急に下がったから食わない」と言われることがありますが、海域平均の数字で見るかぎり、そこまでの急変は起きていません。

前日との差は中央値0.12℃、平均でも0.17℃。この10年で最も大きかった差が1.85℃です。前日より1℃以上動いた日は3,931日のうち21日(0.5%)、1℃以上下がった日は10日(0.3%)しかありませんでした。日単位で水温が入れ替わる前提で釣行を組み立てる必要はないと言えます。
ただし、これはあくまで海域ぜんたいを平均した数字です。自分が立っている堤防の足もと、水深の浅い港の奥、川が流れ込む場所の水温までは、この値では分かりません。そこを知りたいなら、自分で測るしかないというのが正直なところです。釣り場に持ち込める水温計で測れます。
海域の平均で季節の位置をつかんで、足もとの数字は自分で測る。この2段がまえでいいと思うよ。
まとめ|年間の幅のどこにいるかで考える
水温が何度なら釣れるか、という問いに1つの数字で答えるのは難しいのですが、安芸灘・伊予灘に限れば次のように整理できます。
- 年間の幅は月平均で12.1〜26.7℃、日ごとの実測でも10.18〜28.86℃。ただし周防灘では8.4℃まで下がる年もある
- 10年で8℃を割った日はない。マダイの生息水温下限を大きく割り込む冷え方はしていない
- 10〜16℃は1月から4月のふつうの状態。特別に低い水温ではない
- 水温の底は3月で気温より2か月おそい。陸の体感とずれる
- 1日単位ではほとんど動かない。足もとの水温は自分で測る
見るべきなのは絶対値そのものより、1年の幅のどこにいるかです。出かける日を決めたら、釣り指数ページで直近の観測値を確かめてから出発してください。広島・瀬戸内の釣り場選びはエリア別のガイドにまとめています。


